映像コントアワード2017
デジタルコンテンツに特化したお笑いカンパニーであるキャロット株式会社(Carrot Inc.)が『映像コントアワード2017』を開催しました。多くの映像コント(スケッチ)が公開された2016年に続いて、2回目の開催となります。映像コントおよび21世紀のお笑いにおいて必要な要素を価値基準として全11作品を選考しました。
まだまだ製作面にハードルがある中で、2017年はいくつかの映像コントグループのみが継続的に作品を配信していくという状況でした。そのため、映像コントグループ内での各メンバーによる個性がより濃く反映された作品が揃いました。
受賞作にはお笑い評論家の菅家しのぶさんによる解説があります。まずは作品を体感し、次に解説をもとに再視聴し、その他の素晴らしい映像コントにも触れていただければと思います。
視聴者にとっては作品ガイドとなるように、制作者にとっては活動の励みになるように、お笑い界にとっては一つの価値基準となるように、そして映像コントの普及と発展を目的としてお送りします。
◆開催日:2017年12月16日(土)
◆対 象:2016年12月〜2017年11月にWebおよびデジタルパッケージにて公開された映像コント。メンバー自身で脚本から編集までを完結させることが条件。
◆賞 品:最優秀作品賞へ作品名を刻印したブロンズ像を進呈
◆主 催:キャロット株式会社(Carrot Inc.)
◆開催経緯:キャロット株式会社は「21世紀型の革新的なお笑い体験の創出」を掲げ、法人化前の2011年より映像コントの制作・映像コントの翻訳・お笑いWebメディアの運営を行ってきました。
映像コントとは「映像効果をコントに応用することでお笑いにかつてない驚きをもたらす映像作品としてのコント」です。この新しいお笑いのフォーマットが芸人の創造力をかきたて、視聴者の心を揺さぶり、お笑い界の活性化になることを願って「映像コントアワード」を開催いたします。
《映像コントアワード2017 受賞作一覧》
【最優秀作品賞】
映像コントとして総合的に優れた最優秀作品に贈られる賞。
◆プリズン/Mr.Party
常識という言葉を安易に使う人間がいる。そういう人は、例えば、相手が間違ったことをしていたときに「常識的に分かりそうなものだ」と言ってしまう。よくあるシチュエーションではあるが、果たして、それは本当に世間一般に通じるほどの言説なのだろうか。本編の主人公はごくありふれた行動を犯罪行為とみなされ、なんと牢獄に捕らえられてしまう。その世界の中で、彼は非常識ということになる。だが、それを見ている私たちにしてみれば、彼を恐れる周囲の人たちこそ非常識に思える。つまり、このコントは常識の曖昧さをテーマにしている……かどうかは、知らない。[菅家しのぶ]
【優秀作品賞】
映像コントとして総合的に優れた作品に贈られる賞。
◆わかってへん/neenu
口うるさく責め立ててくる恋人の唇を強引に奪って、黙らせてしまう……恋愛ドラマにありがちなシチュエーションである。平々凡々な人生を歩んできた私には、とても出来ない行為である。否、この世の中に存在する恋人同士の中でも、こんな状況を成立させてしまえるような彼氏彼女なんて、そうはいないだろう。そんな特殊なシチュエーションの、一見するとロマンティックな行動の異常性を浮き彫りにしている本作。お察し通りのオチではあるが、なんともいえない画の強さになんだか引き込まれてしまう。[菅家しのぶ]
◆新人にて候/ウゴォオ
例えば、テレビで芸人が演じているコントの中で、多くの人がそれを異常であると感じさせるような人物が出てきた場合、そのコントの登場人物たちは「なんだお前は!?」というような反応を見せる。しかし、現実の世界において、そういった人物と遭遇してしまった場合、そのように反応してみせることは難しい。その異常性は指摘されることなく、それでいて鳴りを潜めることもなく、淡々とその存在を主張し続ける。この、なんともいえない、つかみどころのない空気感。たまらない。[菅家しのぶ]
【映像賞】
映像効果をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。
◆本日の料理/Mr.Party
テレビの情報番組などを見ていると、最新の調理器具が紹介されていることがある。これが妙に面白い。普段、料理を作ることなんて殆どないのに、ついつい興味を持ってしまう。陳腐な言い回しになってしまうが、まるで魔法のように料理が出来上がっていくのである。自分が知らないうちに時代というのは進歩していくものなのだと、実感させられる瞬間だ。電子レンジが異常な働きを見せている本作品の滑稽さの根本には、そんな知らず知らずのうちに起きていた調理器具の進化を見据えた視点があるように思う。それはそれとして、コントとしてシンプルに優秀な作品でもある。手堅い三段オチの構成に、出てくる料理の画の説得力、出演者の演技など、笑いの面で評価すべき点が多い。[菅家しのぶ]
【コンテクスト賞】
現代またはグローバルな事象への批評をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。
◆移住命令/Mr.Party
こういう未来は実際に起こり得るだろうと感じた。能力の優劣が反映されない、ただクネクネと踊り続けていればいいだけの世界。それは、ある意味ではとても理想的だけれど、余計なことの出来ない不自由な世界でもある。ああ、なんというディストピア。……しかし、これは客観的に見ているから感じられることであって、世界がそういう方向へと進んでしまったとき、果たして私たちはその異変に気付けるのだろうか……。[菅家しのぶ]
【お笑い賞】
お笑いとして本質的な面白みのある秀作に贈られる賞。
◆囲碁/neenu
基本的に人間は集団で行動する生き物である。知恵を使い、集団を率いて、鋭い牙を持つ猛獣や大きな体を持った巨大生物たちと対抗してきた歴史的背景によるものだろう。知らんけど。で、あるからして、恐るべき頭脳の持ち主である相手に集団の力を用いて戦いを挑んでいる本作品の構図は理に適っているといえる。無論、このような試合は、本来ならば有り得ない。競技にはルールがあり、それを守ってこそ成立するからだ。とはいえ、その守るべきルールをあえて破り、ワチャワチャと盛り上がっている様子はとても楽しそうで、こちらもなんだかニヤニヤしてしまった。[菅家しのぶ]
【ドラマ賞】
ドラマ性をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。
◆タラレバ闇娘/neenu
どんなに恵まれているように見える人でも、多かれ少なかれ現状に対して不満を抱いているものである。そして「~たら」「~れば」と理想とする状況を夢想する。だが、その不満の度合いを更に超えてきた人の話を聞いてしまったら……ある意味、よくあるマウンティングのシチュエーションではあるのだが、本作品では極端に表現することでドープな笑いへと昇華されている。その上で、なんともいえない味わいのオチ。なるほど、確かにドラマチックである。[菅家しのぶ]
【名演賞】
キャラクターの作り込みおよび優れた演技の出演者に贈られる賞。
◆アイデンティティ/Mr.Party(北高校番長役 KEI)
不良というのは、文字通り良くない人のことを示している。社会的に禁じられている行動を取り、世間に背いている。だからこそ、不良のアイデンティティに固執している彼らの言動は、逆に不良のあるべき姿から逸脱している。だが、上下関係や交友関係に厳しいという現実の不良の社会にしても、案外似たようなところはあるのかもしれない。本作品は、そんな不良の矛盾した滑稽さを炙り出した作品といえるだろう。出演陣のメリハリある演技(特に北高の番長を演じているKEI氏の切り替わり)も良い。[菅家しのぶ]
【ショート作品賞】
映像ショートコントとして総合的に優れた秀作に贈られる賞。
◆もしもスパイダーマンが現実にいたら/Mr.Party
誰もが知っている名作『スパイダーマン』を“現実にいたら”と称しながら、ドイヒーな状況へと追い込んでいくパロディである。ひとつひとつのネタはややベタに寄っているものの、ブリッジに使われている「スパイダーマンのテーマ」で落とされてしまう強引さが妙な可笑しみを引き出している。ところで、刑務所に入るとケツを掘られるというのは、その界隈では共通の認識なのだろうか。実に恐ろしい。[菅家しのぶ]
【特別賞】
これまでの枠組みにはない秀作に贈られる賞。
◆クソYouTuberお菓子レビュー/neenu
一見すると、ありがちなYouTuberの退屈なお菓子レビュー動画なのだが、カメラの向きを変えてみると、まったく別の状況が見えてくる……という作品だ。正直、360度カメラの機能を完璧に使いこなせているとまではいえないが、コメディ動画の新しいカタチを作り出すための実験作であることを考慮すると、評価すべきところもあるように感じられる。今後の進化に期待したい。[菅家しのぶ]
【翻訳賞】
翻訳した映像コントの秀作に贈られる賞。
◆俺、脚折れてるから!/Smosh(翻訳:Carrot)
足の骨を折られた被害者が、足の骨を折った加害者の反省する気持ちを利用して、ムチャクチャな要求をする。ありがちな設定ではあるが、要求する内容があまりにもムチャクチャで笑ってしまった。なんでカウチがイヤなんだ。床の方がよっぽどイヤだろ。それで最終的に椅子の上ってどういう神経しているんだ。……このあたりの理解不能なところも、海外の人間ならではのハイテンションな演技でまんまと納得させられてしまった。うーむ。[菅家しのぶ]
《映像コントアワード2017 受賞式の様子》
◆Carrot Inc.代表の日高がそれぞれの受賞作品を発表します
◆最優秀作品賞に選ばれたMr.PartyのTAKAさんにブロンズ像を進呈
◆最後にMr.PartyのTAKAさんより受賞のコメントを頂きました
「僕の作った映像コントに関しては、2016年の作品と2017年の作品で毛色が違うと思うんですよね。2017年の作品はドラマ的要素や映像的要素が強くなっています。『プリズン』はそんな2017年の作品達の総合的な位置付けとして最優秀作品賞を獲ったんだなと。そういう意味でありがとうございますと!」
◆来年の映像コントアワードはどんな作品が揃うでしょうか? ぜひチェックしてください!
《映像コントを制作したい方を募集中!》
Carrot Inc.では出演・脚本・監督・編集・スタッフなど様々な形で映像コントの制作を行いたい方を募集します!
スタジオや小道具などの費用負担、カメラや音声機材の貸し出し、撮影や編集や制作進行のノウハウ提供などで強力にサポートさせて頂きます!
「ウェブの芸人の1期生」として一緒に新しいお笑いの冒険にでかけませんか?
《出資者を募集しております》
キャロット株式会社では、映像コントおよび21世紀型の革新的なお笑い体験の創出を推進するにあたり、投資家様・スポンサー様からのご出資を募っています。皆さまからの条件に合わせて柔軟に対応させていただきますので、ぜひともご連絡頂ければ幸いです。
◆ご連絡はこちらへお願いします
キャロット株式会社(Carrot Inc.)
メール:hidakaアットcarrot-inc.jp
電話:050-5306-1793
担当:日高