映像コントアワード2016

デジタルコンテンツに特化したお笑いカンパニーであるCarrot Inc.が「映像コントアワード2016」を開催しました。多くの映像コント(スケッチ)が公開された2016年に、初めて開催される映像コントの祭典です。映像コントおよび21世紀のお笑いにおいて必要な要素を価値基準として全10作品を選考しました。
映像コントの黎明期である今年は一年を通して目に見えるようにクオリティが上がっていきました。そのため、選考結果が分かれた際には先に制作された作品を優先し、その分野の先駆的作品として賞を授けています。
受賞作にはお笑い評論家の菅家しのぶさんによる解説があります。まずは作品を体感し、次に解説をもとに再視聴し、その他の素晴らしい映像コントにも触れていただければと思います。
視聴者にとっては作品ガイドとなるように、制作者にとっては活動の励みになるように、お笑い界にとっては一つの価値基準となるように、そして映像コントの普及と発展を願ってお送りします。
◆開催日:2016年12月18日(日)
◆対 象:2015年12月〜2016年11月にWebおよびデジタルパッケージにて公開された映像コント。メンバー自身で脚本から編集までを完結させることが条件。
◆賞 品:最優秀作品賞へ作品名を刻印したブロンズ像を進呈
◆主 催:Carrot Inc.
《受賞作一覧》
【最優秀作品賞】
映像コントとして総合的に優れた最優秀作品に贈られる賞。
◆本当のクリエイティブとは?/neenu
「眠っているクリエイティブな才能を開花してくれるセミナー」という設定の元に繰り広げられる大喜利大会。面白い切り口から生まれる回答とお互いの発想を称賛し合う内輪感がなかなか面白い。[菅家しのぶ]
【優秀作品賞】
映像コントとして総合的に優れた作品に贈られる賞。
◆バーベキュー/Mr.Party
バーベキュー会場を舞台に繰り広げられるボケの無差別放射。それぞれのボケにツッコミが入らないので、ボケに漂う違和感を素材のままに楽しむことが出来る。ただ、それ故に、見る人を選ぶ作品だろう。[菅家しのぶ]
◆野球出身のキックボクサー田中摩沙斗の試合が野球過ぎる/月出日達
野球と格闘技を掛け合わせる発想もさることながら、掛け合わせたことによって生じる歪みを上手く笑いに昇華できている。特に、かなり唐突に繰り出される盗塁のくだりは、画のバカバカしさもあって大笑いしてしまった。なんだよ、あのキレ味鋭いスライディングは。途中、中だるみする場面もあるが、良作だ。[菅家しのぶ]
【映像賞】
映像効果をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。
◆イメージ編集/neenu
実際のインタビュイーの発言とそれを受けてインタビュアーが頭の中で思い描いている想像上の完成記事を照らし合わせることで、生じる差異を笑いに昇華している作品である。インタビュイーのあまりにもドイヒーな発言の数々をインタビュアーがなんとか記事として成立させようとしている、その苦労を想像するだけで同情の念を禁じ得ない……が、それがまた面白い。[菅家しのぶ]
【コンテクスト賞】
現代またはグローバルな事象への批評をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。
◆ポックリー/Mr.Party
「驚くほど簡単に安楽死させられる」ことが売りの薬を注射されているにもかかわらず、何故かまったく死なない老人を様々な方法で弱らせて、なんとか“安楽死”へ導こうと奮闘する様を描いた不条理作品。一見、単なる暴力映像だが、どんなに痛めつけられても立ち上がり続ける老人の姿は、今もなお着実に伸び続けている平均寿命がもたらす長寿への不安を表しているようにも思える。果たして、これから続いていくであろう長い人生の果てに、私たちは安らかな死を迎えることが出来るのか……。[菅家しのぶ]
【ドラマ賞】
ドラマ性をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。
◆パパはサンタクロース/Mr.Party
クリスマスの夜、五年前に別れた夫がサンタクロースの恰好をして現れた……そんなドラマチックなシチュエーションが思わぬ事態を招いてしまう、ホームコメディの趣が強い作品。全てが明らかになるくだりの肩透かし感もまた楽しい。[菅家しのぶ]
【名演賞】
キャラクターの作り込みおよび優れた演技の出演者に贈られる賞。
◆おすすめのソファ(販売員役)/Mr.Party
とあるアンティークショップを訪れたカップルが、ふと興味を抱いた高級感漂うソファに使われている皮は、なんと……という驚きとナンセンスで構築された作品である。販売員を演じている役者の落ち着いた語り口が、あやふやで不確かな台本の面白さを上手く引き出している。[菅家しのぶ]
【ショート作品賞】
映像ショートコントとして総合的に優れた秀作に贈られる賞。
◆清潔スナイパー/藤井翔太
シンプル。とにかくシンプル。揺るぎない。揺れようがない。手作り感のある粗めの映像とキレ味の鋭い編集によって生み出された不条理感が、奇妙な後味を残している。[菅家しのぶ]
【特別賞】
これまでの枠組みにはない秀作に贈られる賞。
◆パントマイムと黒衣でアクションあるあるしてみた/maimuima
これは面白い! シンプルな機材と黒子だけを使って、アクション映画にありがちなシーンを再現しようという試みだ。カメラアングルを意識した動きと小道具の使い方がとても上手で、その再現性の高さに目を見張った。途中、アクションの域を超え、漫画的になるのも楽しい。[菅家しのぶ]
《受賞式の様子》
◆Carrot Inc.代表の日高がそれぞれの受賞作品を発表します

◆最優秀作品賞に選ばれたneenuの小川さんにブロンズ像を進呈

◆最後にneenuの小川さんより受賞のコメントを頂きました
「やろうとしていることをちゃんと観てもらえてるんだなという嬉しさがありました。以前の作品は知り合いに出演してもらっていました。でも『本当のクリエイティブとは?』は初めて吉本クリエイティブエージェンシーの方が出演だったので、ちゃんと作んなきゃっていうことで、本気で頑張りました。舞台でもできそうな内容ですが、映像ならではの要素を踏まえた作品にしました。」

◆来年の映像コントアワードはどんな作品が揃うでしょうか? ぜひチェックしてください!
