【映像コント】いつの間にかボクの部屋にいる「尾崎」
ビジネスパーソンの「ボク」が仕事から帰宅すると、いつの間にか「尾崎」が部屋にいる。
ボクは「尾崎」という名前以外にその男のことを知らない。
他人以上で知人未満の男である尾崎さんがボクのプライベートの境界線を失くしていく。
ここは都内の住宅街。
オートロック付きのマンションにビジネスパーソンの「ボク」が帰宅する時間だ。
弁当を持ったボクが帰途につく。
ボクは部屋に入って弁当を食べながらテレビを見始めた。
ボクがテレビに夢中になっていると左斜め後ろに気を感じた。
クチャ、クチャ、というような音とともに、その気はだんだん大きくなった。
この気は人間のものだ!
と、そこにいたのは「尾崎」だった。尾崎さんはただただチョコを食べている。
しばらくしてボクは尾崎さんに挨拶をした。他人以上で知人未満の男である尾崎さんに。
もちろん尾崎さんは同居人でもない。だけどいつの間にか、ただそこにいることがある。
弁当を食べ終えたボクは風呂に入ることにした。
風呂から出て一息つこうとすると尾崎さんはまだいた。
尾崎さんはボクの冷蔵庫を覗いている。
というより、ボクが帰りに買ったビールとおつまみを食べているじゃないか…
唖然としたボクは「ビール飲んだんすか…?」と発することしかできない。
憎たらしい笑顔を浮かべた尾崎さんに、ボクは怒りの熱がふつふつと湧いてきた。
気が付くとボクは「尾崎!!」と胸ぐらを掴んでいた。
が、次の瞬間にはやられてしまった…
ボクは無念さに泣くしかなかった。
「尾崎」という目の前の無念さに。
「尾崎」の自由奔放は一晩中続いた。
テレビを見ようとすれば「尾崎」がいる。
歯を磨こうとすれば「尾崎」がいる。
眠りにつこうとすれば急に灯りが点いて、
そこに「尾崎」がいる。
それでもボクは必死に眠りにつこうともがく。
このまま朝が来たらボクのプライベートの全てが「尾崎」に奪われるような気がして。
しかし「尾崎!」と叫んで抗えば抗うほどにその境界線は朝が来るよりも早いスピードで失われる。
次の日。ボクは河川敷にいた。
夕日の中で尾崎さんを担いで。そして走って。
思えばいつだったか尾崎さんが部屋にいたときも、次の日は河川敷でこうしてたような気もする。
その頃より尾崎さんは太った気もする。
気がつけばそこにいる「尾崎」は、これからもボクにとっての友達でも知人でもない。
だけど決して他人ではない。
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